2017年1月13日金曜日

マチ類の標識放流技術と放流再捕記録&資源評価

マチ類.


なかなか聞き慣れない言葉だと思います.
基本的にはフエダイ科に属する魚のうち,沖縄のほうの方言で〜マチと呼ばれる魚の類を指すと思っています.

代表格として

アカマチ
シューマチ
クルキンマチ
マーマチ

が挙げられます.

標準名では
アカマチ→ハマダイ
シューマチ→アオダイ
クルキンマチ→ヒメダイ
マーマチ→オオヒメ

となります.

それぞれ非常に美味な魚です.
なかなか鹿児島近海では釣れませんが,三島ぐらいの海域からこれらの魚が釣れ始めます.

これらのマチ類は漁獲量がかなり減っていることもあって,積極的に保護されて,資源回復計画が練られ,その生態についても研究されています.資源回復計画がうまく言っているかどうかと言われれば,クエスチョンなところもあるのしれません.というのも1つの種だけを増やすというのはなかなか海の中のバランス的には難しいと思うからです.エサとなるような小魚は旋網によって相変わらず大量に捕獲されているわけで,個人的にはエサの減少は直接漁獲以上に深刻なダメージを生態系に与えているのではないか?と思います.
このあたりについてはまだまだ勉強中で全くのシロウトですから,上記の考え方はあくまで考えているだけで根拠も証拠もありませんことご了承ください.
しかしまぁ,専門家がすべて正しいことを言うわけではないですからね,専門家がちゃんとしていれば,日本のクロマグロの資源は現在のように枯渇状態まで追い詰められなかったと思います.
クロマグロもマチ類と同じぐらい保護されればいいんでしょうけど,なかなかクロマグロの保護は進みませんね.

と,話は横道にそれてしまいましたが,マチ類の研究成果の中でもかなり気になったデータを示します.

マチ類の標識放流技術と放流再捕記録

http://kagoshima.suigi.jp/KenkyuHoukoku/21P-machi.pdf

こちらのデータではいわゆるタグアンドリリースをして,再び捕まえられたときの移動距離を示しています.
マチ類は基本的には曽根間を移動しないのでは?と考えられてきました.
しかし,このデータが示すのは,移動しうる個体も居るということです.
アオダイは最大で150kmも離れた別の曽根まで移動しています.また,オオヒメも93km移動した個体が捕まえられています.
これは非常に資源回復を測る上で,ポジティブな面もあるデータだと思います.
もし,曽根間で移動しないのであれば,一度曽根の資源を枯らしてしまうと,二度と戻ることは無いです.しかし,曽根間で移動するのであれば,かなり資源量が少なくなった曽根にも魚が移動してきて,再び資源が回復するということも考えられます.
だからといってもちろん捕り尽くしていいわけではありません.
再補時に半年〜1年以上経っている個体でも全く移動していない個体もいるのです.
なので,回遊性のある魚であるというわけではなく,移動する個体もいるということだと思います.
こういった情報を元に,資源回復の方策を色々と考える必要があるのだと思います.

では,少し古いデータではありますが,どの程度の資源量であると試算されているのかそのデータを示します.

平成24年度マチ類(奄美・沖縄・先島諸島)の資源評価

http://abchan.fra.go.jp/digests24/details/2443.pdf

平成26(2014)年度マチ類(奄美・沖縄・先島諸島)の資源評価

http://abchan.fra.go.jp/digests26/details/2643.pdf

マチ類に関しては非常に深刻な漁業資源状況となったため,平成22年まで資源回復計画がとられていました.
http://www.jfa.maff.go.jp/j/suisin/s_kouiki/nihonkai/pdf/n19-2-6-1.pdf
http://www.jfa.maff.go.jp/j/suisin/s_keikaku/pdf/matirui.pdf

通年禁漁であったところが開放され,値段の高い「ハマダイ」の集中漁獲が問題であるように思います.

資源評価としては
アオダイ→若干減少〜横ばい
ヒメダイ→横ばい
オオヒメ→横ばい
ハマダイ→一応増加

とハマダイのみ増加の評価にはなっているが,記事を読んでもらうと分かるように,求め方としては1航海あたりの漁獲量(CPUE)がある程度の資源評価の対象となっていることやコホート分析の前提条件が必ずしも合っているとはいい難い点にあります.

ということで,真の評価は難しいんじゃないかと思います.
また,興味深いのは耳石年輪の輪紋解析による年齢の推定です.
樹木で言うところの年輪解析みたいなものです.

これによると,ヒメダイのメスのみ18歳が寿命とされていますが,その他の魚は25歳以上生きるとされています.ハマダイについては35歳ほど寿命があるという話も.
これらはあくまで推定ですので,色々と今後議論の余地はあると思います.

また,成熟についてですが,
アオダイは6歳でほぼ成熟,早い個体は2歳から
ヒメダイは0歳でも40%成熟し,4歳でほぼすべての個体が成熟
オオヒメは1歳から成熟始まり,2歳で40%成熟,5歳でほぼ成熟
ハマダイは8歳以上から成熟個体が現れ,19歳以上でほぼ成熟ということ.

つまり,ハマダイは成熟が遅く,小さい個体をとりすぎるとかなり危険な状況になりそうだということです.

マチ類については今も保護区や周年禁漁区は存在していますが,特に産卵期の漁獲は深刻であると思われるので,せめてその間は全面禁漁としてもよいのではないか?と思います.
引用文献には一時的な管理方策にならないように1操業あたりの漁獲制限を設けるなどの措置も検討すべきとして締められています.

鹿児島以南と東京の諸島群以外の方はあまり聞き慣れないマチ類ですが,非常に美味な魚です.守っていけたらいいなと思います.

また,その他の魚種の資源評価結果についてはこういうページで見ることも出来ます.
http://abchan.fra.go.jp/digests27/

1つの魚種の資源だけを回復させるということは生態系上難しいと思いますので,もっともっと幅広い視点も必要なのかなと思います.
 下のマイワシの漁獲グラフなんか見ると,本当にゾッとしますよ.


引用:http://abchan.fra.go.jp/digests27/details/2702.pdf


それでわ.









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